へバーデン結節などガンコな痛みに対する動注治療(モヤモヤ血管に対する治療)
モヤモヤ血管とは
加齢、ケガ、使いすぎなどが原因で筋肉、腱、靭帯などが傷むと、修復反応として炎症が起こります。
この炎症が長期化すると、修復する物質を運搬するために必要な血管以外にも、余分な血管新生が次々と起こります。細くて走行がいびつな異常な血管ができてしまうのです。この異常血管をモヤモヤ血管と呼びます。神経と一緒に増生し、さらなる痛みの原因となります。
モヤモヤ血管は、いびつな形で、造影した際にモヤモヤして見えることからこのように呼ばれています。蛇行したり、静脈と癒合したりして正常な機能はしていません。痛みを発生させているのは、モヤモヤ血管と一緒に増生している神経です。この「余計な神経が痛みの信号を発してしまう」ことが痛みを強くし、長引かせてしまうと最近わかってきました。モヤモヤ血管の壁から痛み物質がたびたび放出され、周囲の神経から脳に伝達され、過敏な痛みを引き起こしています。モヤモヤ血管を減らすことで神経からの痛み信号が減り、痛みが減ることがわかってきています。
- 加齢によりできやすい。40歳を超えるとできやすいと報告されています。歳をとると痛みがなかなか良くならない原因のひとつです。
- スポーツ、仕事などでの繰り返しの負荷がかかっている部位にできやすい。
- 一度できてしまうとなかなか減少しない。
動注治療とは
動注治療(動脈注射治療)は患部近くの動脈から薬剤を注射してモヤモヤ血管を塞栓する(詰まらせる)治療です。使用する薬剤はイミペネム・シラスタチンという薬剤で、20年以上前から抗生物質として感染症の治療に使用される薬剤です。この薬剤は、非常に溶けにくいために少量の液体と混ぜると溶けきらずに小さな粒子となり、この粒子が異常に細いモヤモヤ血管のみを詰まらせます。(正常な血管は詰まりません。)正常な血管では、薬剤粒子により一時的に血流が少し停滞しても、血流速度が速いためにすぐに再開通することが研究によりわかっています。
出典:Inui S, Okuno Y et al. JVIR(2021)
治療効果
モヤモヤ血管に対する動注治療の治療効果は治療後3~4週後に最も実感されます。
1回の治療ですべてのモヤモヤ血管を除去することはできないため、4~6週間程度の間隔を空けて2~3回治療することが多いです。
動注治療ができる疾患・ガンコな痛み
当院で行う動注治療はカテーテルを使用しない動注治療ですので、手・足・肘部分に限られます。(症状の緩和が目的です。 変形を治すわけではありません)
疾患例
- へバーデン結節
- ブシャール結節
- 母指CM関節症
- ドケルバン腱鞘炎
- 上腕骨外側上顆炎(テニス肘)
- 上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)
- 足底腱膜炎
- 外反母趾
- アキレス腱炎
- 有痛性外脛骨
動注治療の実際
- エコー(超音波)で動脈を確認し、消毒をします。
- 注射針をエコーで確認しながら動脈に挿入していきます。
- 薬剤を注入します。
- 針を抜き、5分くらい圧迫します。
約10分で治療終了です。
出典:Inui S, Okuno Y et al. JVIR(2021)
動注治療の合併症
注射による内出血、薬剤によるアレルギーが起こることがあります。
※いずれも局所的な場合が多いです。
費用
動注治療は保険適用されず自費診療となります。
疾患や部位ごとに費用は異なります。
手の治療 | 1回 25,000円 |
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肘の治療 | 1回 30,000円 |
足の治療 | 1回 30,000円 |
この治療はオクノクリニックの奥野先生によって2014年に開発されたものです。
当院はオクノクリニックとライセンス契約を結び動注治療を行なっております。
(年間5,000人近くの方がこの治療をうけ、重大な副作用は出ておらず安全な治療です。)